vol.25 対照的なふたり
「WE!」2006年8月号掲載
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先日、サッカー選手の中田英寿が現役引退を表明しました。
まだ29歳という若さと、ワールドカップの日本敗退直後という事もあって、ニュース速報が流される程のビッグな扱いで『中田引退』のニュースは日本中を駆け巡りました。国民の主な反応としては「中田らしくていいんじゃない」「もったいない、もっとやれるのに」「ボロボロになるまでやるのも男の道」と様々ですが、共通して言える感覚は「もっと見ていたい」に尽きると思います。要するに突然そんな事を言われて皆戸惑っているのでしょう。“別れ”の準備ができていなかったのです。
これは恋人にある日突然別れ話を切り出されるのに似ています。勿論納得はしていないのだけれど「あの人難しい人だから…やっぱり自分が我慢するしかないのかな。結局その方があの人の為なのかも…」みたいな感じです。つまり日本国民はみんな中田に突然フラれた訳です。しかも一方的に。これからしばらくはポッカリと心に穴の開いた日々が続く事でしょう。
さてそれに対して対照的なのが日ハムの新庄です。新庄の場合は「オレ引退するからさ〜。それまでの1年間みんなで楽しんで行こうよ〜」といった趣旨の引退発表です。これは“別れ”その物を楽しんで行こうという新しいエンターテインメントと言えます。恋人同士に例えて言うならば最後の旅行、最後の食事、最後の電話、最後のセックスをイベント仕立てにして楽しんでいくような物です。こうした別れのプロセスを踏むと、お互いの理解度や納得度は段階的にどんどん深くなって行きます。勿論その先に決定な“別れ”があるので寂しさが消える事はありませんが、それでも「笑顔で別れて行こう」という前向きな姿勢が芽生え始めてきます。新庄の場合、これをプロ野球というステージでやり切ってやろうという希有なエンターテイナーとしての顔がうかがえます。面白過ぎますね、新庄。
という事で、今年限りでプロスポーツの世界から去って行く対照的なふたり。自分の事をまず考えた中田、お客さんの事をまず考えた新庄。どちらもそれでいいと思います。共通している部分は、共に記憶に残る選手だったという事ではないでしょうか。