vol.32 国技館置き引き騒動(後編)
「WE!」2007年3月号掲載
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(前回までのあらすじ)
---国技館でオイラの前に座ったババアがコートを外人に置き引きされたと主張する。そして一部始終を隣席に座っていた大相撲ファンの若い男の子(赤の他人)にグチる。大相撲ファンは相撲を見たい欲求とババアのグチに付き合わなければならない立場の間で揺れていた。---
オイラはその話に聞き耳を立てながらあるひとつの事を確信していました。「犯人は外人じゃない。ババア、お前がどこかに忘れてきたんだ!」と。それには証拠がありました。そのオイラの席に座っていた外人達は、今現在オイラの後ろ、通路を隔てたナナメ2列後ろの席に座っているからです。置き引きをするようなヤツが仕事の後にいつまでも犯行現場に残って相撲を観戦している訳がありません。しかもニコニコ笑って善良オーラを放ちながら。
土俵場では大関が登場して館内は歓声に包まれたりしています。それなのにまだババアはまわりの迷惑を顧みず、立ち上がってキョロキョロしたり、背もたれから首を伸ばしてオイラの足下の方を「ココらあたりにないかしら?」としつこく覗き込んだり、再度大相撲ファンに「どうしたモンかしらねぇ。あなたも外人さん見たでしょ?え?見てない?アラそう」「あたしはココに確かに置いておいたんだけどねぇ。外人さんが持って行くと思う?」などとチクチク話しかけたりしています。
土俵に集中したいオイラはだんだんイライラしてきました。そのうちどうにも我慢できなくなってきてババアに一言「いいかげんにしてちょっと黙っててくれませんかね?」と言おうとした時でした。それまで哀れみの感情で話を聞いていた大相撲ファンが、自分の楽しみをさえぎり続けるババアにさすがに切れて、開いていた星取り表代わりのノートを勢い良くパタンと閉じると「そんなに気になるんなら国技館の人に聞いてみたらいいじゃないですか!」と憮然とした表情で言い放ちました。いいぞ!大相撲ファン!お前の言う通りだ。
さすがにその一言はこたえたらしく、ババアはしばらく黙って土俵を見つめていましたが、数秒後に何事も無かったかのように再度口を開きました。
「琴欧州〜〜〜〜!がんばって〜〜〜!」
その叫びを聞いて、ババアのまわりでその一件に巻き込まれた全員が思いました。「なんじゃそりゃ!」と。