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ピエール瀧はどんぐりおじさん

vol.53 カツ丼でキレる!

「WE!」2008年12月号掲載



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とある日の昼下がり。
オイラは腹が減ったのでそば屋の出前を頼む事にしました。メニューをじっくり見ているとカツ丼がオイラにささやきかけてきました。「そこのメタボ中年。オイラを食ってメタボの足しにしたらどうだい?」と。いつもならサービスセットメニュー(小カツ丼+もりそば)を頼むオイラでしたが、その日はカツ丼のささやきに乗っかってカツ丼を注文したのでした。豚の顔で。
数十分後、出前の兄ちゃんがカツ丼をエスコートしてやってきました。飢えた鬼畜の表情で兄ちゃんからカツ丼をひったくったオイラは、早速リビングのテーブルまで走って行ってカツ丼のフタを開けたのでした。
「こっ、これは?!…、カツが小っちぇぇぇぇぇ!」
通常なら器一杯にカツ&卵が敷き詰められているのがカツ丼界の掟のハズなのですが、オイラの目の前に現れたモノは白いご飯の真ん中辺りにたった4切れのカツ丼の具らしきモノが横たわっているだけのモノだったのです。例えて言うならば、白いカーペットを敷いた6畳間の真ん中に子供用ゴムボートを置いた感じとでも言いましょうか。
オイラに驚愕と落胆の感情が同時に湧き上がり、それらが怒りに転じるのにそう時間はかかりませんでした。すぐさま電話を掴んだオイラはケンカ腰になりそうな感情を必死で押さえながらそば屋に電話しました。
「これは…、カツ丼ですか?」
「はい。カツ丼ですが。何か?」
「あの…、カツ小ちゃくないですか?たった4切れって!」
「うちのカツ丼は4切れです」
「(カチーン!)でもそれってセットのヤツ(ミニカツ丼)と一緒じゃ」
「ミニカツ丼は3切れでカツ丼だと4切れです」
「でもこれミニカツ丼用のカツを4切れにしただけでしょ!」
「そんな事ありません。それでカツ丼です」
「じゃあ…、え〜と、もういいわ!!!」
電話を切ったオイラはムカっ腹が立っていました。だって絶対セットメニュー用のカツ丼を4切れにしただけなんだもん!昼飯時も終わり頃だったし。でなきゃカツ一切れが1センチ未満ってありえねえだろ!
電話を切った後も納得がいかないオイラは、しばらく考えた後もう一度電話を手に取りました。再び店に電話したオイラは出来る限りの落ち着いた口調で追加の大もりそばを注文しました。そしてそばを持ってきた兄ちゃんにさっきのカツ丼をそのまま手渡して「コレを持って帰って店の従業員全員でカツ丼として正しいかどうか検討するように」と議題を提示しました(名付けて“カツディスカッション”)。そしてムカムカしながらもりそばを胃袋に叩き込んだのでした。
翌日、器を下げに来た兄ちゃんがウチの呼び鈴を鳴らしました。出てみると、「店長にカツ丼代の800円を返してこいって言われたんで持ってきました」と言って800円を差し出しました。でもオイラは両手を握りしめて受け取りませんでした。なんか受け取ったら負けな気がしたので。
カツ丼で勝ち負けを感じている40代。これがオイラの目下の悩みです。