vol.55 俺様と病院
「WE!」2009年2月号掲載
最近、病院に行くと「瀧様〜」と自分の名前を呼ばれます。オイラこの感じになんとも違和感を覚えます。いったいいつからそうなったのでしょう?
オイラが子供の頃(というか結構最近まで)は「瀧さ〜ん」という呼び方だったような気がします。
この患者に対しての“様付け”現象には様々な背景があると推測されます。
ひとつは、病院にとって患者とはお客様同様であり、だから失礼のないように様を付けるという考え方です。しかし患者の方にしてみれば、体になんらかの不調を覚えてそれを改善してもらいに病院に来ている訳ですから、確実に客気分でない事は確かです。むしろ、「“様”を付けて呼ばれたからにはある程度ちゃんとしていなくては」といった余計な心理的プレッシャーを課せられる事になり、待合室などで若干しんどい思いをしなければなりません。こっちは体調悪いって言ってんのに。
他の理由としては、「我々は事務方なので、患者さんに対する立場として、医者とは明確に階級を分けております」という病院側のアピールも考えられます。その証拠に肝心の医者は診察室で「どうしました瀧さん?」とこちらを“さん付け”で呼びますし、医者が患者の事を“様付け”で呼ぶ事はほとんど無いような気がします。このような組織の構造が理由の場合、「それはわかったけどウラでやってくれよ、ああ腹痛え」とやはりこちらは思ってしまいます。
その他に面白そうな理由も考えてみました。それは“さん付け”で呼ぶ事によって、一部の人々に不都合が出てしまうのではないか?という理由です。
例えば名字が『富士』だった人の場合、たくさんの人々がサイレントに待っている環境の中「富士さ〜ん、これにオシッコ採って来てください」なんて呼ばれたらどんな思いがするでしょう?周囲の人が「え?山が?!」と思う局面の中、真っ青な顔で白髪頭の長身のおっさんが検尿コップを受け取りに現れたりしたらクスクス笑いと共にブログのネタになってしまう事は確実でしょう。同じ理由で『甲斐さん』(来たばっかなのに?!)、『奥さん』(ジジイじゃねーかよ!)、『コダックさん』(ホントだ。子供4人も連れてる!)、『リバイアさん』(召還?)なども不都合が生じる名前と言えるでしょう。
しかしこの理由については“様付け”にしても問題がなくなる事はないようです。王さんの場合『王様』と呼ばれる事によって急にバロック調のきらびやかな雰囲気になってしまいますからね。病院できらびやかってねぇ。同じ理由で『ヨンさん』も病院に行きづらいですね。
まあ、何が言いたいかというと病院では“さん付け”でいいんじゃないの?という事です。対等な立場の方が信頼関係を築けそうな気がするんですけどね。