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ピエール瀧はどんぐりおじさん

vol.66 私は生かされているのでしょうか?

「WE!」2010年1月号掲載



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人生長く生きているといろんな経験をします。
中でも『死ぬかと思った経験』は誰にでもあるのではないでしょうか?
オイラの場合はその経験が2度あります。1度目は子供の時に近所の川(安倍川)で遊んでいた時の事。
本流に支流がぶつかる部分がえぐれて深くなっており、オイラ達子供はいつも夏になると岩の上から海パン姿でそこに飛び込んで遊んでいました。
ある日の事、前日の雨により増水した川の流れを目の前にオイラ達近所の子供達は岩の上に並んでいました。ゴウゴウと音を立てて流れるいつもより急流の濁った川。その暴力的な流れを目前にしてオイラ達は「飛び込むべきか、飛び込まざるべきか?」を迷っていました。川の見かけがいつもよりあきらかに違っていたからです。
誰もが飛び込むのを躊躇していた中、お調子者のオイラは「大丈夫っしょ!イェ〜!」などと気楽に叫んで飛び込んでしまったのです。次の瞬間、ギューン!と驚く程の強い力で水底に引き込まれたオイラの体は、洗濯機の中のハンドタオルよろしくグルグルと水底でシェイクされました。上下も左右もわからなくなり、経験した事の無い水圧にパニクってもがいたりしたのですが、水面の光は無常にも彼方に遠ざかっていきます。「ヤバい!完全に死んだ!お父さん、お母さんごめんなさい!」そう悟った瞬間、足先が川底の石に触れ、オイラはみんなのいる場所から20Mも下流で「プハッ!」と水面から顔を出しました。ギリセーフ。この経験は小学生にとってはあまりにも恐ろしく、帰宅してからも親には決して話す事はありませんでした。怒られるのが怖くて。
2度目は電気グルーヴでデビューしてからの出来事。九州にツアーで行った時の事です。
打ち上げの会場は雑居ビルの三階にある飲み屋でした。打ち上げが終了してスタッフが会計を済ませている間、先に千鳥足で店を出たオイラは二階から三階に続く階段の踊り場の手すりにひとり腰掛けて皆が店内から出て来るのを待っていました。いつもならそんな事はしないのですが、酒に酔っていたせいもあり気が大きくなってしまっていたのでしょう。
皆がなかなか店から出てこない事に業を煮やしたオイラが、無意識に後ろに体重を移した瞬間の事でした。体がバランスを失ってひっくり返り、なんと後頭部から空中に身を投げる形になってしまいました。ちょうどスキューバダイビングのバックロールエントリーを、階段の踊り場の手すりでやったようなモノです。一階の床の材質はコンクリート。そこまでの距離およそ7M。
「あっ!うぁぁぁぁ〜、ヤベっ!死んだぁぁぁぁ〜〜っ!」
そう思った次の瞬間、おいらの体は空中で自動的にバック中の形で一回転し、なんと足ウラから完璧に地面に着地しました。「スターーーーンッ!」ってな感じで。さっきまで三階の手すりに腰掛けていたハズのおいらが1秒後にはコンクリートの地面に無意識で立ち尽くしていたのです。
「…ハッ!ヤバい!今のは完璧にやばかった!完全に死んだと思った!ものすごい奇跡!」
そう思ってドギマギしていたおいら(おそらく瞳孔は全開)でしたが、続いて何事も無く店内から出て来たみんなにはその事を黙っていました。理由は、なぜか猛烈に恥ずかしかったからです。酒に酔って九死に一生を得た事が!
結局、このように『死ぬかと思った経験』はなかなか人に話す機会がないものなんですね。あなたにもそんな経験ありませんか?